「親も70代(80代)になり、そろそろ実家のことや将来のことが気になり始めた」
「でも、お金や相続の話を切り出すと『まだ死なない!』『縁起でもない』と怒られそう……」
このような不安や悩みをお持ちではありませんか?
相続の現場で多くの方とお会いしてきた専門家として感じているのは、「相続で一番困るのは、もっと早く話し合っておけばよかったと後悔すること」ということです。
親御様が元気で判断力がしっかりしている「今」だからこそ、ご家族みんなが笑顔で過ごすための「まだ先」の準備を始めることができます。
今回は、正月やお盆などご家族が集まるタイミングで、無理なく角を立てずに「家族会議」を始めるためのステップをご紹介します。
目次
なぜ「親が元気なうち」の話し合いが必要なのか?
相続の準備というと「税金対策(節税)」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、私たちが何より大切だと考えているのは「ご家族の安心と、親御様の想いをつなぐこと」です。
もし事前のお話し合いがないまま親御様が体調を崩されたり、認知症などで判断能力が低下してしまったりすると、次のような困りごとが発生する可能性があります。
- 財産の状況が分からず、手続きが進まない
(どこに口座があるのか、実家の権利証がどこにあるのか分からない) - 預貯金の管理や不動産の売却などを本人の意思だけで行うことが難しくなり、最悪の場合「凍結」してしまう
(親御様の名義のままでは、介護費用に充てるための口座引き出しや実家の売却・活用が難しくなる) - ごきょうだい間で意思疎通が図れず、感情的な対立が起きる
(「誰が実家を継ぐのか」「介護の負担をどう分担するか」で揉めてしまう)
これらは、親御様が元気なうちに「これからの暮らしや希望」を少しずつ共有しておくだけで、多くを予防することができます。
切り出し方に悩んだら:角を立てない3つのアプローチ

「お金の話を直接するのは気が引ける……」という方は、次のような「きっかけ」を活用してみるのがおすすめです。
1. 身近なニュースや季節の話題から
「最近、空き家問題のニュースをよく見かけるけれど、近所でも増えたよね」
「お友達の実家で片付け(生前整理)を始めたらしいよ」
このように、一般的な社会の話題から自然に会話をつなげていく方法です。
2. 自分たちの将来の話から
「私たちもそろそろ老後の資金や健康のことを考え始めていてね」
「自分たちも万が一のときの整理をしようと思うんだけど、お父さんやお母さんはどう考えている?」
子世代自身が主語となり、自分の将来設計の一環として相談する姿勢を見せると、親御様も身構えずに話しやすくなります。
3. 正月やお盆などの「家族が集まる日」を活かす
帰省や親族の集まりは、家族みんなの顔が揃う貴重な機会です。
「みんなが集まっているから、今後のことについて少しだけ共有しておこうか」と切り出すことができます。
家族会議をスムーズに進める3つのステップ
家族会議は、一度の話し合いですべてを決める必要はありません。焦らず、段階を踏んで進めていきましょう。
ステップ1:親御様の「これからの希望(暮らし・医療)」を聞く
↓
ステップ2:財産や実家の「現状(どこに何があるか)」を把握する
↓
ステップ3:ご家族全員で「これからの選択肢」を共有する

ステップ1:親御様の「これからの希望」に耳を傾ける
最初から「財産がいくらあるか」を聞くのは避けましょう。
まずは「これからどんな風に過ごしたいか」「医療や介護が必要になったらどうしてほしいか」といった、親御様の「想いや希望」を中心に聞くことがポイントです。
- 「これからも自宅で過ごしたいか」
- 「施設への入居も視野に入れているか」
- 「万が一のとき、延命治療や介護はどう希望するか」
- 「財産の管理を誰に任せたいか」
- 「自宅や土地を将来どうしたいか」
ステップ2:現状の「財産や資料」のありかを確認する
希望が共有できたら、次に「どこに何があるか」を確認します。具体的な金額まで細かく把握できなくても、「どこに口座があり、重要書類が保管されているか」が分かるだけで十分です。
最初から正確な財産額を調べる必要はありません。まずは「財産の一覧表」を作るところから始めましょう。
- 預貯金
- 有価証券(株、投資信託など)
- 生命保険
- 不動産(賃貸物件、駐車場、農地、空き地など)
- (沖縄の場合)軍用地
- 通帳や印鑑、権利証(登記識別情報)の保管場所
ステップ3:ごきょうだい・ご家族で共有する
親御様の希望と現状が把握できたら、ごきょうだいを含めた家族全員で内容を共有します。
誰か特定のひとりだけに負担が偏らないよう、定期的に情報を共有し合える関係を作っておくことが大切です。
家族会議で気をつけたいポイント(NGな接し方)
- ❌ 節税やお金の話ばかりを優先する
(親御様が「財産目当てなのかな」と感じてしまうと、話し合いが閉ざされてしまいます) - ❌ 子世代の意見を押し付ける
(主役はあくまで親御様です。親御様の判断や気持ちを尊重する姿勢が大切です) - ❌ 一度で結論を出そうとする
(何回かに分けて、世間話を交えながら少しずつ進めるのが理想です)
専門家と一緒に「これからの安心」をかたちに
ご家族だけで話し合いを進めようとすると、どうしても感情的になってしまったり、法的な手続きや税金の専門知識が必要になって立ち止まってしまったりすることがあります。
「家族だけで話すと角が立ちそう」
「うちの場合、何から手をつければいいのかわからない」
そのようなときは、税理士、司法書士、行政書士、弁護士など、内容に応じて専門家に相談してみるのも一つの選択肢です。
また、家族会議をした結果、「相続税がかかるのか知りたい」「土地や自宅をどうすればいいのか分からない」という話になったら、ぜひ専門家に相談してみてください。
さかしげ税務顧問では、単に税金の計算をするだけでなく、「相続の『まだ先』を、一緒に考える税理士」として、親御様とご家族の想いに寄り添ったサポートを行っています。
納得がいかないまま無理なご提案を進めることは一切ありません。
まずはお気軽にご家族の「これからのこと」をお聞かせください。
この記事を書いた人
税理士 坂本茂人
さかしげ税務顧問 代表
相続税・贈与税など、相続に関する税務を中心に業務を行っています。 「相続の『まだ先』を、一緒に考える税理士」を目指し、 ご家族の将来を一緒に考えることを大切にしています。